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【レポート】ETSUZAN2026ブースト会議を8月22日〜23日に開催しました。

2026/8/27

2026年8月22日(土)〜23日(日)の2日間、新潟県新潟市のNINNOにて、IT人材育成プログラム「新潟・長野版未踏的育成事業 "ETSUZAN"」の2026年度キックオフイベント「ブースト会議」を開催しました。

今年度採択された6チーム・7名のクリエータが集合し、プロジェクトマネージャー(PM)や先輩クリエータとの対話を重ねながら、それぞれのプロジェクトと向き合い、開発に没頭する2日間となりました。

期間中、多くのチームがプロジェクトの方向性を見つめ直し、AIコーディングにより最後の発表で「動くもの」を披露するチームも登場。AIによって開発スピードが大きく変わりつつある今だからこそ、「何をつくるのか」「なぜつくるのか」を問い続けることの重要性を感じさせるブースト会議となりました。

ETSUZANとは

ETSUZAN(越山)は、新潟・長野の15〜30歳を対象としたIT人材発掘・育成プログラムです。「NOT、ビジコン。奇人、求む。」を合言葉に、新潟・長野から世界を変える人材「クリエータ」を発掘し、開発に没頭できる環境を提供しています。

地方では、若者が夢中になって開発に取り組み、同じ熱量を持つ仲間や専門家と試行錯誤できる機会は限られています。「住んでいる場所にかかわらず、技術やアイデアに夢中になり、思い切り試行錯誤できる環境をつくりたい」という思いのもと、ETSUZANは、新潟・長野を中心とした企業・自治体・大学などが連携しながら、若手クリエータが挑戦できるエコシステムづくりに取り組んでいます。

採択されたクリエータには最大150万円の開発支援金を提供し、PMやメンターによる伴走のもと、約5ヶ月間にわたってプロジェクトを磨き上げていきます。

2026年度は6チーム・7名を採択。そのスタートとなる「ブースト会議」は、プロジェクトの方向性を見つめ直し、PMや仲間との関係を築く重要な機会です。

▼採択されたクリエータの詳細は、こちらの記事をご覧ください
【ETSUZAN2026】採択クリエータが決定!
https://etsuzan.org/posts/creator2026-information

開会挨拶|ETSUZANで、新しい山を登る

開会にあたり、運営事務局を代表してSocialups株式会社 代表取締役の髙瀬が挨拶しました。「越山はビジコンではありません。プレゼンが上手いか下手かで選ぶのではなく、『自分がこれをやりたいんだ』『突き詰めたいんだ』『楽しいんだ』という人を採択しています」と語り、ETSUZANでの挑戦を「登山」に重ねます。

Socialups株式会社 代表取締役の高瀬が開会挨拶の様子

「本当に登山と一緒だと思います。最初はめちゃくちゃきつくて、8合目くらいで死にそうになる。でも登りきった時の景色は本当に綺麗で、達成感がすごい。そして2回目に登った時には、1回目より圧倒的に楽になっている」

まだ登ったことのない山を一つ登り切れば、次の山にも挑戦できるようになる。そして、一人では登れなかった山も、仲間と一緒なら登れるかもしれない。最後に「まずは新しい山を登り始めましょう。そして、ちょっと限界ギリギリまで攻めてみましょう」と呼びかけ、「成果報告会の時には、『全然こんなことができると思ってなかった』と言える瞬間を、みんなで味わいたい」と締めくくりました。

高瀬の開会挨拶の様子

PMからの熱いメッセージ

続いて、今年度クリエータに伴走する3名のPMが登壇。それぞれの経験を交えながら、これから始まる5ヶ月に向けてメッセージを送りました。

片岡PMは、担当するプロジェクトについて「自分の情熱に突き動かされている」「タイトルを見ただけでワクワクする」と紹介しながら、チーム同士でも交流し、一緒に活動していこうと呼びかけました。

片岡PM

新田PMは、自身もPMとしてクリエータと関わる中で刺激を受け、今年1月に転職したことを紹介。「PMもまた成長しています。一緒に5ヶ月間頑張りましょう」と語りました。

新田PM

金澤PMは、「ETSUZANの経験があったからこそ今に生きていることがたくさんあります。ETSUZANの期間を本気で頑張る。そして他のチームと積極的に交流する。そうすれば、必ずその後の人生にいい影響があります」とエールを送りました。

金澤PM

また今回は、ETSUZANの初年度PMを務めた本間和弘さんと村井慎太郎さんもメンターとして参加。株式会社Photosynthの元CTOとしてスマートロック「Akerun」を開発し、その後複数社を起業してきた本間さんと、IPA未踏2009年度採択者で、現在は川崎重工業で病院向け配送ロボットを開発する村井さんが、クリエータの相談に応じました。

特別講演|本間和弘さん「AI時代の開発と起業」

初日の特別講演には、本間和弘さんが登壇。「AI時代の開発と起業」をテーマに、自身の開発・起業経験を踏まえてお話しいただきました。

本間和弘さんによる特別講演の様子①

AIが広げたもの、人間に残されたもの

本間さんがまず語ったのは、AIによって「自分ができること」の範囲そのものが大きく広がったという実感でした。自身の得意分野ではなかった機械学習モデルを開発する必要に迫られた際には、複数のAIと役割を分担しながら何十本もの論文を読み込み、進むべき方向を絞り込んでいったといいます。「絶対1人だと無理なんですけど、AIと対話しながらだと、自分ができなかったことにも挑戦できる」

一方で、AIが自律的に開発を進められるようになるほど、その判断は人間の感覚から少しずつずれていくとも指摘します。見た目は完成していて、テストも通っている。しかし、実際に触れてみると「なぜこうなっているんだろう」と感じる。だからこそ、人間に残されているものの一つが「感性」だと本間さんは語ります。

「『このボタンはここにあるべきじゃないよね』というレベルから、『プロダクトの方向性って、それを解決したかったわけじゃないよね』という本質的な部分まで。そこに立ち返るのは、やっぱりまだ人間に残されている」

アイデアの価値が「逆転」した

かつてプロダクト開発では、Why・How・Whatのうち「How」に大半の時間がかかっていました。しかしAIによって、そのHowが急速に効率化されている。だからこそこれからは、「なぜそれをやるのか」「何をつくるのか」で勝負しなければならないと本間さんは語ります。

「似たようなサービスがすごいスピードで出てくる中で、オリジナリティのあるアイデア、その人の人間性、その人が持っているコミュニティの強さが大事になってきています」

そして問われるのは、どれほど強い願望を持って、そのプロダクトをつくろうとしているのか。「もっとこうあるべきなのに、世の中の製品はなぜなっていないのか!」といった強い気持ちが、プロダクトを前に進める力になると語りました。

本間和弘さんによる特別講演の様子②

「仲間、いた方がいいですよ」

講演の最後、本間さんは一人チームの多い今年度のクリエータに向けて、「仲間、いた方がいいですよ」と切り出しました。そして「仲間が見つけられないということは、そのサービスを欲しいと思っている人がいないのかもしれない」と続けます。

仲間が見つかるということは、そのサービスが「あった方がいい」と本気で思ってくれる人が、自分以外にもいるということ。一人で取り組むことを否定するのではなく、「誰かを巻き込めるほど、自分はこのプロジェクトを語れているか」という問いを、クリエータたちに残しました。

パネルディスカッション①|これまでの越山と、これからの越山

続いて、髙瀬がモデレーターを務め、現PM3名とスポットメンター2名によるパネルディスカッションを実施。これまでのETSUZANや未踏での経験を振り返りながら、クリエータから寄せられた質問に答えていきました。

パネルディスカッションの様子①

追い込まれた時こそ「ヘルプ」を出そう

IPA未踏でイベント推薦システムを開発した経験を持つ新田PMは、当時を「開発が大変すぎて、今でもたまに夢に見る」と振り返ります。その経験から伝えたのが、「人に頼る力」の重要性でした。

一番は、ヘルプの出し方が上手くなることですね。人に頼るというのは意外と難しくて、大人になってもできない人はできないです。ヘルプを出すタイミングや、そのバリエーションを身につけるのは大事だと思います。担当以外のPMもうまく使っていいんです」

一人で抱え込まず、周囲の力を使うことも、ETSUZANで身につけてほしい力の一つです。

お金を集めるために、まず知ってもらう

「お金はどうしているのか」という質問には、本間さんが資金を集める方法として「融資・助成金・株式」の3つを挙げました。ただ、ここで本間さんが強調したのは、制度や手段そのものだけではありません。自分が何をつくっているのか、その価値や面白さを周囲に伝え、応援してくれる人を増やしていくことの重要性です。

静かに何かを作っている人にお金は出ないけれど、『こんなすごいものを作ってるんですよ』と世の中にアピールできる人には出てくるんです。その仕組みが世の中に構築されているので、これをうまく使えるところまで持っていってほしいと思います」

良いものをつくるだけではなく、それを外へ伝え、人を巻き込んでいくこともプロジェクトを前に進める力になる。開発に没頭するクリエータにとっても、大切なメッセージとなりました。

まずは「面白そう」を形にしてみる

村井さんは、技術そのものへの好奇心から開発を始めることも大切だと語ります。「秋葉原に行くのが好きで、パーツショップに行って『この部品、面白そうだな』と、何を作りたいわけでもないけれど手に取ってしまう。そういう入り口もあっていいんじゃないかなと思うんです」

片岡PMも、OSSを作り続ける立場から「暇な時間にちょっと自分の好きなプロダクトを作って世の中に出して、それを何人かでも使ってくれて『いいね』って言ってくれたら嬉しいなと思いながら作ることはよくあります」と語りました。金澤PMからは「昨日の夜に日本酒を飲みながらMeta Ray-Ban向けのiOSアプリを作ったら、動いたんです」という、まさに前日のエピソードも。AIによって試行錯誤のコストが下がった今だからこそ、「まずやってみる」「まず動かしてみる」ことの価値は、これまで以上に大きくなっています。

パネルディスカッションの様子②

パネルディスカッション②|先輩クリエータに聞く

続いて、ETSUZANを修了した先輩クリエータ4名が登壇。金澤PMの進行で、自身のプロジェクトを振り返りました。

パネルディスカッションの様子③

印象的だったのは、ほぼ全員がプロジェクトの途中で形を変えていることでした。

北川さんも、実際に農家のもとへ通い、一緒に農作業をしながら検証を繰り返し、「アプリを作って壊してを繰り返していた」と振り返ります。安宅さんはユーザーテストのため、自ら山へ。つるをつかんで急斜面を登りながら山菜採りを体験する中で、「採取中はスマホを触っている暇がない」と気づき、「それなら音で知らせるのはどうか」という、机上では出てこなかった改善案が生まれました。

自分の足で確かめたからこそ、プロジェクトの形が変わった。この共通点を踏まえ、金澤PMは今年度のクリエータにこう投げかけました。

「AIは一次情報を取りに行けないですけど、皆さんは体があるので、ぜひ一次情報を取りに行ってください」

AIがどれだけ進化しても、ユーザーに会い、現場へ行き、自分自身で感じることは代替できません。

先輩からのエール

セッションの最後には、先輩クリエータから後輩たちへアドバイスが送られました。北川さんは「プロトタイプを数パターン作ってヒアリングする、というのをもっと繰り返していたら、絶対にもっと分かっていたことがあったと思います。たくさん動いて、ユーザーと触れ合ってほしいです」と話します。

高橋さんは「『やらないことを決める』ことが大事。やらないことを決めるということは、やることを決めるということ」と、限られた期間の中で集中することの重要性を伝えました。

安宅さんからは「もっと開発と検証のサイクルを回したかった。当時はAIがなく限界があったので、それを悠々とクリアできる皆さんの環境が羨ましいです。ぜひたくさんヒアリングをしましょう」とエールが送られました。

集中開発タイムと2日間の成果

講演とパネルの後は、担当PMとの開発時間や、スポットメンターによるメンタリングを実施。本間さん・村井さんも各チームを回り、技術面・事業面の双方からアドバイスを行いました。夜には交流会も開催され、クリエータ・PM・メンター・OBOGという立場を越えて、プロジェクトについての議論が続きました。

2日目は朝から集中開発タイムに入り、夕方には各クリエータが2日間の成果を発表しました。

開発の様子①
開発の様子②

印象的だったのは、わずか2日間で、ほぼすべてのプロジェクトが何らかの形で方向性を見直していたことです。対象ユーザーをより具体的な症状を抱える人へ絞り込む、複数考えていた入出力方法に優先順位をつけて音声に一本化する、費用のかさむ実機での試行錯誤からシミュレーション上での検証へ切り替える、ゲーマー向けだった想定ユーザーをより幅広い層へ広げるなど、PM・メンター・先輩クリエータとの対話が、その場で意思決定へと変わっていきました。

わずか2日間で「動くもの」が次々と

成果発表では、すでに動作するプロトタイプも次々と披露されました。街並みの中を走行するデモ、スマートフォンから温度や圧力を制御する装置、シミュレーション上で背景と一体化するディスプレイ、リズムに合わせて動くギターデバイスなど、中にはこれまで触れたことのない技術領域にAIを使いながら挑戦し、2日間で一気に形にしたチームもありました。

「つくる」こと自体のスピードが、これまでとは明らかに変わりつつある。だからこそ、何をつくるのか。なぜつくるのか。誰のためにつくるのか。その問いに向き合い続けることの重要性を、改めて感じる成果発表となりました。

発表の様子(國本さん)

まとめ|登り始めた山は、まだ形を変えていく

2日間のブースト会議を通じて、6組のクリエータはそれぞれ大きな一歩を踏み出しました。技術的な進捗だけでなく、自分たちが本当につくるべきものを問い直し、仲間とのつながりを深めた——まさにこれからの活動をブーストする2日間となりました。

次回のオフラインイベント「八合目会議(中間報告)」は、10月24日(土)〜25日(日)に、長岡市「ミライエ長岡」で開催予定です。成果報告会は、2027年1月16日(土)〜17日(日)に、長岡市で開催予定です。

今後の約5ヶ月でどのような革新的なプロダクトが生まれるのか、大きな注目が集まります。

集合写真

ETSUZAN 2026 運営

ETSUZANは、NINNO(新潟市)を中心としたスタートアップコミュニティや、大学・教育機関が集積する長岡地域をはじめ、新潟・長野県内の多様なエコシステムと連携しながら実施されます。若手クリエータの挑戦を支え、地域を越えたネットワークと起業家精神の醸成を目指します。

◾️運営事務局
Socialups株式会社、株式会社Wakumi、株式会社テレビ新潟放送網、株式会社KOIYAL、株式会社カナタ、一般社団法人越山

◾️スポンサー

◾️後援
長岡市、新潟市、新潟県、長野市、松本市、長野県

◾️お問合せ先
info@etsuzan.org

◾️ETSUZAN 公式情報
ウェブサイト:https://etsuzan.org/
X(旧Twitter):https://x.com/etsuzan_org
Instagram:https://www.instagram.com/etsuzan_org/

〈事務局・運営〉Socialups株式会社、株式会社Wakumi、株式会社テレビ新潟放送網、株式会社KOIYAL、株式会社カナタ、一般社団法人越山

※本事業は、令和7年度「地方の若手人材発掘育成支援事業費補助金」AKATSUKIプロジェクト